組織設立趣意書

 今日は、「人権の世紀」といわれるように、国内的、国際的に人権に関しさまざまな問題が提起され、ひろく人々の関心を集めている。
 日本国憲法も基本的人権の尊重を重要な柱としているが、戦後、国際連合憲章が「人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力 を達成する」ことを、国際連合の目的の一つとして大きく掲げたことを契機として、「世界人権宣言」「国際人権規約」「人種差別撤廃条約」「女子差別撤廃条 約」など人権に関するさまざまな条約・宣言が数多く採択されており、さらにヨーロッパ、アメリカ、アフリカなど各地に地域的人権保障体制が設けられてい る。人権の尊重は今日、世界的な流れになっているということができる。

 「世界人権問題研究センター」は、わが国における人権問題の研究者を動員し、さらに必要な場合には、海外からも研究者を招き、世界的なひろい視野から人 権問題を研究し、人権問題に対する公正で正確な理解を得ることを目的としている。このような人権問題研究センターは、欧米以外には存在せず、「世界人権問題研究センター」は、わが国はもとよりアジア地域最初の人権問題研究センターということができる。

 京都は、平安建都以来、さまざまな外国文化を摂取し、国際性豊かな文化を築き上げるとともに、人権問題にも深くかかわった歴史をもっている。こうした歴 史的背景をもつ京都の地に、平安建都1200年記念事業の一つとして、次の21世紀を展望する「世界人権問題研究センター」を設立することは、まことにふ さわしく、また時宜を得たものということができる。

 研究センターにおいて人権問題について研究を行う場合、研究センターの研究員がそれぞれ個々に自己の課題に取り組む場合もあるが、研究センターとして は、人権問題を研究している人材をひろく全国から集め、ともに研究する共同研究方式に重点を置く方針である。そのため、研究員には、専任研究員のほか、客 員研究員、すなわち他の大学または研究所に所属する研究員であって、常時研究センターの研究に協力するもの、並びに嘱託研究員、すなわち、必要に応じ随時 共同研究に参加するために委嘱する者の三種の研究員を設け、それによって研究センターをひろく全国の人権研究者に開かれたものとし、研究センターが全国の 研究者による人権問題の共同研究の中心となることを期待している。また、以上の研究者は必ずしも日本在住の者に限定せず、必要に応じ海外の研究者を嘱託研 究員として、研究センターの共同研究に参加する道を開くことも必要である。

 この研究センターが、人権問題に関する研究活動の拠点として、将来にわたって安定した歩みを続け、この問題に関する学術研究の振興のため着実な成果を挙げられるよう、ここに財団法人世界人権問題研究センターを設立するものである。

平成6年10月
設立発起人 一同