理事長ご挨拶

世界人権問題研究センター理事長 大谷實(おおやみのる)の写真
公益財団法人世界人権問題研究センター 理事長
大谷 實

Re.スタート~ビジョンを踏まえて

Ⅰあり方検討委員会と改革ビジョン

(1)中期計画から改革ビジョンへ

世界人権問題研究センターは、1994年にスタートして以来、創立の趣旨に即して一定の研究成果を挙げてまいりましたが、二〇一二年に公益財団法人への移行を契機として、21世紀を真に人権の世紀とするため、2013年から2017年度までの5年間を中期計画期間と定め、発展のための努力を重ねてきました。
しかし、時代に即応した、より一層充実した持続可能な民間研究機関とするため、①センターの研究活動の活性化、②研究成果の還元の充実、および③財務の改善を主な目的として、2016年11月に「あり方検討委員会」を立ち上げ、5回にわたる委員会の議論を踏まえまして、昨年11月末に当センターを存続・発展させるための「改革ビジョン」を策定した次第です。

(2)改革ビジョンの中身

ビジョンの内容をかいつまんで申しますと、①世界人権問題研究センター創設時の設立趣意書および2012年の内閣府認定による当法人の定款を再確認した上で、当センターのミッションを明確にすること、②人権問題を研究する人材を広く全国から集め、全国規模の共同研究方式を基本として研究事業を展開すること、③研究成果の発信に努め、府民・市民の人権意識の向上を図ること、④生起する人権課題を的確に捉えて社会のニーズに応えられるようにするために、研究体制を見直すこと、⑤従来の研究部門制を廃止し、プロジェクト型チームを編成して研究を展開すること、⑥研究期限を3年以内とし、研究成果を論文等で積極的に発表するとともに、府民・市民の人権教育・啓発に資するように発信方法を工夫すること、⑦社会のニーズの把握や研究成果の発信力の飛躍的向上を目指し、人権大学講座、人権ガイドの研修等の研究に関連した事業の充実を図ること、⑧収入増加のための工夫や基本財産運用等につき、京都府および京都市と協議しながら推進すること、以上の八つに要約することができます。

Ⅱ改革ビジョンの具体化

(1)研究体制

当センターとしましては、今回の改革ビジョンを「第一次中期計画」に続く「第二次中期計画」として位置づけ、二〇一八年度から二〇二〇年度までを新体制への移行期間とし、二〇二一年度から新体制下で、改革ビジョンに即した研究事業を展開してまいります。
研究体制としてはプロジェクト・チーム型とし、原則として4~5のチームを設置することと致しました。各チームの編成は、理事長、所長及び編成顧問による編成会議の合議によることを原則とし、一応、3チームと考えていますが(合議枠)、必要に応じて所長が1~2チームを推薦できることとしました(推薦枠)。チームは、代表者(チームリーダー)、専任研究員、嘱託研究員等で構成されます。

(2)研究の推進

チーム編成会議の論議をふまえて、新たに「インターネットと人権」や「子どもの人権」などの研究テーマが取り上げられます。問題は、予定の3年間で社会や自治体に提言できるような成果を上げることができるかにあります。例えば「子どもと人権」を選んだ場合、我が国の子どもに係る人権課題だけでも、虐待や貧困、いじめ、体罰、不登校など数多くあり、原因から対策等のすべてを包括した人権課題の研究をすることは、かなり難しいと思われます。その意味で、研究対象を具体的に選ぶにあたっては、研究の必要性と併せて、その実効性・可能性についても慎重な配慮が望まれます。

Ⅲ Reスタートの今後

今回の改革ビジョンは、有識者の皆さまの貴重なご意見や議論を踏まえ、研究運営委員会および理事会・評議員会にお諮りして決定したものであります。当センターとしては、このビジョンを踏まえて、人権問題を対象とする民間学術研究機関として最高のものを目指し、改革に取り組んでまいる所存です。今年は、世界人権宣言採択70周年という節目の年に当たります。「人権文化の豊かな京都」を目標として、更なる努力を傾注いたします。本誌の読者の皆さまにおかれましても、当センターの一層の発展のために、忌憚のないご意見を賜り、今後とも御支援くださいますよう、何卒よろしくお願い致します。

(2018年4月1日)


理事長就任にあたって

この度、公益財団法人世界人権問題研究センター理事会の選定により、当センターの理事長に就任しました大谷 實(おおや みのる)でございます。一言、就任の挨拶を申し上げます。

当センターの初代理事長は、林屋辰三郎先生、2代目が上田正昭先生でありまして、私は3代目理事長ということになります。前理事長の上田先生は、改めて申すまでもなく、平安建都千二百年記念事業推進協議会において、「21世紀は人権文化の輝く世紀となるべきである」と力説され、当センターの設立に心血を注がれた、当センターの生みの親ともいうべきで功労者です。

上田先生は、1997年副理事長、1997年6月から2015年3月までの18年間は理事長として、初めは田畑 茂二郎所長、次いで安藤 仁介現所長とともに、卓越した指導力を発揮され、只今のようなアジア地域で初めての総合的な学術研究団体の構築に成功されました。

偉大な足跡を残された上田先生の後を受け継ぐ私は、如何にも力量不足であり、大任を全うできるか、大変不安でございます。ただ、幸いにも私は、1997年の人権擁護施策推進法に基づく人権擁護推進審議会の学識経験者委員として、5年にわたり審議に参加して人権問題に取り組んだ経験があり、また、学校法人同志社総長に就任した2001年からこの度の理事に就任するまで、当センターの評議員として運営に参加してまいりました。さらに、犯罪被害者の人権問題にも長い間関心を払ってまいりました。そうした経験を活かしながら、畏友・安藤仁介所長のお助けを仰ぎ、評議員会、理事会のご支援を頂戴しながら、当センター事業の発展に尽力したいと考えております。

さて、1994年の創立当初、当センターは、文部大臣から財団法人として認可された団体でしたが、2012年には、内閣府認定による公益財団法人に移行いたしました。参考までに法人の定款を見てみますと、第3条に、「この法人は、平安建都1200年を記念して、京都の歴史と伝統、特に学術を初めとする文化を基礎に、人権問題について広く世界的視野に立った総合的な調査・研究を行い、この問題に関しての広範な学問分野での交流や国内、国外の研究機関及び研究者との連携、交流を促進し、もって国の内外にわたる人権問題に係る学術・研究の振興を図ることを目的とする」とあります。

この目的に即して、只今は、第1部「国際的人権保障体制の研究」、第2部「同和問題の研究」、第3部「定住外国人の人権問題の研究」、第4部「女性の人権問題の研究」、第5部「人権教育の理論と方法の研究」の5部門に分かれて、調査・研究が展開されており、部長、専任研究員、客員研究員および嘱託研究員約100人が調査・研究に取り組んでおり、多くの成果を挙げてこられました。

しかし、同和問題をはじめ、女性や定住外国人を巡る人権侵害が解消されていないばかりか、インターネットによる差別など、新たな人権問題が生まれつつあります。また、昨年発行された「世界人権問題研究センター 20年史」を拝見しますと、例えば、人権諸条約の効果的な実現を保障するための国際的な制度の構築(第1部)、民主化が進展した現代における差別意識の現状把握(第2部)、ヘイトスピーチなどについての新たな定住外国人問題の取り組み(第3部)、女性問題の歴史と現状の見直し(第4部)、生涯学習としての人権教育(第5部)などが喫緊の課題として挙げられているところであります。

私は、理事長として、当面、現行の5部体制を維持しながら、調査・研究の一層の発展・充実を図りたいと願っています。当センターの研究業務の統括者である安藤所長の方針に従い、所長と研究部長で構成されます研究運営委員会の協議に基づき、研究部門の円滑な運営および人権大学等の人権啓発活動に努めてまいる所存でございます。
当センターが、国内はもとより、世界に人権文化を発信する拠点となることを念願して、努力する覚悟です。ご支援ご協力のほど、何卒、宜しくお願い申し上げます。

(2015年4月)